座標軸 2021.03

10年目に思う3・11
向野幾世【奈良大学元講師】

 東日本大震災から10年。今も忘れられない歌がある。詠み人は知らない。

 かりそめに
 死者2万人というなかれ
 親あり 子あり はらからのあり

 3・11に限らず、新聞を通して死者、行方不明者の数を聞かない日はない。そんなとき、心の中でこの歌をつぶやく。昨年からは新型コロナウイルスの感染者、死者の数。住んでいる地の、東京の、大阪の、いや世界中の国々のコロナ禍にある人の数。そのつど数のむこうに「親あり、子あり、はらからあり」とつぶやく。

 10年前。3・11の死者1万5千899人と知ったが、その中の85人の死がこの場所であったという地に立ったことがある。宮城県石巻市大川小学校の校庭である。その時、震災から9カ月を経ていたが。

 「がんばろう 石巻」と大きく書かれた南浜の被災地があった。津波が一つ残らずさらった草地によく見ると歯ブラシやランドセルの一部が「さっきまで日常がありました」と告げていた。

 ※詳細は2021年3月号本誌にて。

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