座標軸 2021.12
毎朝 髭を剃るということ
人声につかまり立てば冬の暮れ 水原秋櫻子
コロナに明け暮れたこの年も逝く。自粛中の私に、もっと自粛するようにという天の計らいか。敬老の日に他でもない、自分が自分に骨折入院という贈り物をしてしまった。コロナ禍の病院は、ただでも逼迫していると知っていながら、そこに入院をした。家族の面会、お見舞いなし。部屋から出る時はマスク。あらゆる動作の前後は消毒。
入院と決まった朝、取り急ぎ読む本を数冊カバンに入れた。ヴィクトール・ E ・フランクルの『夜と霧』も入れた。いつも机の端に積み上げていて、いつか読もうと思いつつ「またね」「また今度ね」と、脇に押しやっていた本だ。心のどこかであのアウシュビッツ強制収容所の理不尽で過酷極まりない収容所ゆきと、今の自分に課せられた入院を重ねていたのかもしれない。
※詳細は2021年12月号本誌にて。
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